touchaku9月16日(日) 1時間遅れは普通のKTM(マレー鉄道の略号)でも、始発から遅れることはいくら何でも稀なので早めにクアラルンプール駅へ向かう。尚、これまでもこれからもクアラランプールと書くが、正式な名称はSentral Kuala Lumpurである。しからばSentralでないKuala Lumpurは、これもSentral駅の一つ北側にあってここは現在は近郊電車しかとまらぬがかつては長距離列車が発着していた中央駅の地位を譲った今でも荘厳な駅舎で存在している。駅前にはこれまた荘厳なKTM本社の建物もあるが今は長距離列車は全て新設のSentral駅からである。 Kuala Lumpurのホテルだけは日本から予約して置いた。始めはこのKuala Lumpur(旧駅!)にステーションホテルがあり、3年前Ipohでも100年以上の歴史あるステーションホテルに泊まり味を占めていたのでそこを狙ったが、残念ながら倒産していて叶わず繁華街ブキビンタンにあるFURAMA ホテルである。どこか懐かしい名前だなと後から気づいたのは、40年前香港でパスポートを盗られ、領事館から再発行するまでそこから外に出るなと指定された滞在先が同じ名前のホテルだった。その繁華街からはモノレールに乗って駅に向かう。 モノレールはゴムタイヤ式2両編成、いかにも定員が少ない。繁華街とKuala Lumpur駅を直接結ぶ唯一の大衆交通機関(バスが有るやもしれぬが渋滞が慢性化している中心街では利用できない)なのにである。さすがにこのほかの市内輸送機関は鉄のレール上を走る電車であるが、これが経営母体がばらばらなのか乗り換えは一旦改札を出て、乗り換え先の改札を入る、しかも作りやすいところに駅を作るから乗り換え客の便利さなど考えてない、・・・とこれは現地に暮らしている日本人から聞いた。因みにKuala Lumpurに乗り入れているのはこのモノレールと私鉄1社だけである。 幸い日曜日だったので空いていた。 モノレールと云っても羽田モノレールを思い浮かべてはいけない。ディスニーランド並である。 Kuala Lumpur駅コンコース。何故か日本語もある。そんなに日本人が大勢来るのだろうか、謎。KLIAというのは国際空港のことで、ここから空港鉄道が出ている。前日空港からここまで乗ってきたが35リンギット(当時@25円)で恐ろしく高い。ソウルの空港鉄道も特急は高いが本数の多い各停は約半額だがここは各停も同料金。当地にいる知人と会い食事を摂る予定があったので渋滞の心配が無い空港鉄道に乗ったが二人で70、それにここからえっちらおっちら荷物を抱えてモノレールに乗るかタクシーでホテルまで行くことを考えると普通なら80リンギットくらいのタクシーに乗るのが正解である。Rapid KLというのは唯一ここに入ってくる私鉄、KTM KomuterというのはKTMの近郊電車のこと。モノレールはここまで来て居らず駅本屋を出て何百メートルか歩いて、道路を横断した先にある。ホテルも沢山ある繁華街へ行くモノレールの案内が無いという不親切さ!旅慣れた旅行者と見られたのか何回か外人に道を尋ねられた。プラットホーム1-2と言うのが目指すKTM長距離列車用ホームである。本数が少ないから南行き北行き各1本で不自由しないがこの先旅をして行くとホームが2本有るだけ上等と言うことが判ってくる。 乗車した13列車は定刻0900発車、快調に飛ばして途中駅もほぼ定時で行く、快調快調、KTMも定時運転するようになった、とこの時は思った。 座席車は2等だけ、しかしそのクロスシートはリクライニングは出来るがあっと驚く「集団離婚配置」、車両中央を境に座席が前後のデッキを向いている。肝心の中央部で写真撮るのをわすれてしまったがこの写真から遠くの座席は背中をこちらに向けていることが判る。 途中Pulau Sebang(旧駅名Tampin)にて。ここまで線路は改良工事(半ば新線敷設に近い大規模な工事)がされていて、この看板から判るようにこの駅もプラットホームが4本になる。電柱も立てられていたからKTM Komuterがここまで来るようになるのだろう。 数分の遅れでGemas到着、正午であるがもう日中の東南線終点のTumpatまで行く列車は無い。実はプロカメラマン米屋浩二氏のホームページでここGemas駅のひなびた様子の写真に魅せられKTM本線と東南線の分岐駅だから列車も多いはずだしここで半日写真を撮って過ごし一泊、翌朝Tumpat行きの急行に乗ってロケハン、次の日来るお目当ての旧ブルートレイン編成を撮る場所を決めるという算段をたてたのである。 ところがGemas駅は西側に線路も付け替えて移設され旧駅舎だけは未だ使われているがホームは新駅に変わっていてがっかりである。取りあえず駅前でホテルを決めカメラだけ持って駅にひきかえした。 旧駅舎の未だ使われている待合室から、付け替えられた線路を東南線Kuala Lipis発Woodlands行きローカル列車が到着した。最後部の無蓋車に積まれているのは工事用発電機、これはローカル列車も客車が優等列車のお古となりエアコン用の電源車が必要となったが新製するより簡単に手に入る発電機を貨車に乗せてでっち上げたのである。尚ローカル(客車)列車はWoodlands/Tumpat間にしか運行されていない。 旧ホームから北方Kuala Lumpur側を望む。トラスブリッジは構内を跨ぐ歩道橋でこのホームが使われていたときは写真撮影に格好の場所だったろうと思われる。東南線は右へ分岐する。新ホームもこれと同じ構成で右1本が駅本屋と一体でこの写真はそこと向き合う島式ホームで計3ホームはKuala Lumpur駅より多い。ここは旧ホームで高さが無く簡単に上り下りが出来るが新ホームは電車運行区間は勿論客車運行区間でも日本並みに高く背の低い人間は簡単に(飛び降りることは危険だが出来ても)上れない。客車は昔ながらの低いデッキだから高いホームで上下車するときはエイヤッとばかりに跨がねばならない。しかし低い昔のホームは未だ沢山残っているから、日本から行ったブルートレインには各乗降口下に垂直に取り付けられた非常ハシゴを踏みしめ手摺に手を掛けて腕力を頼りに乗り降りしなければならないという問題がある。KTM全体としては、一昨年通過したタイ国境のPadang Besar駅ホームも高くなっていたから最終的には日本並みの高ホームに向け進んではいるからゆくゆくは低床ホーム用客車は改造されるのだろう。(余談、Padang Besar駅ではホームと客車デッキ床面とホームの間に落ち込まないよう板を乗務員が渡していた。乗客の殆ど100%がマレー半島縦断の外国人なので怪我され評判になったら困ると考えた?) これがGemas駅待合室に掲示されていた全列車の発着表。この駅はマレーシアでこれでも(電車区間を除き)一番発着数の多い駅である。少し固まっているところもあるが24時間旅客列車が出たり入ったりしている。南行きが奇数、北行き(東南線はTumpat方面が北)が偶数列車番号である。KTMのWEB時刻表には載っていないが18,19列車Malayan Tigerブルートレインも載っている。61,64,91,92はローカル(区間)列車である。28,29列車はKuala Lumpurと東南線をこの駅でスイッチバックして結ぶ夜行急行である。 列車の来ない旧駅に長居は無用、それに太陽はほぼ真上の季節でやたらと暑いが休んでいては勿体ない。駅北方で線路をオーバークロスする建設中の道路に登ってみた。ネコとなんとかは高いところに上りたがる、これは正解で分岐する東南線とその横を行く機関区への引き込み線、勿論反対側には本線と新旧駅・ホームも見渡せた。 15列車が東南線を走り抜け接近、約30分遅れ。左方に伸びる線は本線(南北線)Kuala Lumpur方面、列車の右に有る頼りない線路は機関区連絡線。 振り返って見た列車が再加速するときのこの黒煙。40年以上前肥薩線で重油併燃D51が不完全燃焼の黒煙を豪快に上げながら急坂を上るのを見て以来、これは酷い。この列車は直進して真ん中のホームに入る。手前のホームには既に北向きの貨物列車が停車している。 この時間帯のGemas駅の発着時刻を上掲発着表から抜き出したのを下に示す。カッコ内は当日の実態である。尚この場所は駅の北側であるから遠く離れた南側は詳細には監視できなかったのでそちらのデータは書いてない。 1レ 1703(1830)着 / 1704 発 12レ 1729 着 / 1730(1810) 発 15レ 1708(1730)着 / 1735(1815?)発 何を言いたいかというと、この日は12レ、15レは20~40分の遅れでまあまあ順当で有ったことに対し看板特急1レは約90分弱遅れていたらしいと言う状況下で運転(指令)の不手際についてである。 1列車が来ないなあと待っていると(その間18時過ぎても30分前に到着している15レは真ん中のホームに停車したまま)北行きの12レが残った1本のホームに入ってしまった。右から貨物、15レ、12レ。3本しかないホームが全部埋まっていたら1レは入ってこられない。当然すぐさま15レが南下して1本空け、1レが入ってくるスペースを作ると考えた。とにかく1レは一等座席車も組み込まれた看板特急列車である。ところが12レが40分遅れで北に向け発車して行くではないか。この時点で(上掲写真参照)未だ15レはホームに残っている。 そんな中90分遅れて1レが接近してきた。15レは?後を振り返ったら既に南に向け発車してホームは空だった。15レと1レは両者とも終点は同じWoodlandsだがここからの所要時間は15レは3時間50分、1レは3時間20分。これくらいの差であると途中で追い抜こうと抜くまいと終着駅には雁行して到着することになる。そんなことなら、15レは定時(一寸遅れででも)で出してしまい12レと先の駅で交換させれば殆ど遅れることなく終点まで行けたではないか!元々定時なら特急1レが先着するからと言う理由ではまさか無いだろうが15レを巻き添えで意味もなくGemasに40分以上停車させるとは、KTMの運転指令の遅れ取り戻し意欲の欠如を知った。 18時50分当たりが暗くなる中、長時間ホームを占領していた貨物列車が堂々の重連で発車して行く。当分の間対向(旅客)列車は来ないから心置きなくゆっくり走れる! Gemasはたまたま鉄道の分岐点となったが田舎町である。駅前にタクシーも居ない。それにマレーシアはイスラム国家ということで、それでも華人経営の食堂は無いかと探したら、案ずるより易し駅前通に食堂が見つかった。夕食はいそいそとそこへ。目的は冷たいビール。明日からの旅の安全を祈って先ず一杯、さらなる安全を祈り、良い写真を祈り、後は記憶なし。 翌日から宿泊する東南線沿いのGemasより大きな町や都市では、全くアルコール飲料にはお目に掛かることは無かった。これが飲み納めの記念になるとも知らずご機嫌な自分。 最後にもう1枚。 蚊が顔の周りを飛び回ると気になって眠れないので日本から高圧ガスでシュッと一吹きの殺虫剤を持ってきた。それを寝る前に部屋の四隅に吹いたら天井から哀れ子供のヤモリが落ちてきた。
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